1日限定両想い
「あの人不器用だからさ、俺にはずっと気持ちが漏れてたんだよ。あぁ好きなんだな、大事にしたいんだなって見てて分かった。」
『私が一方的に想ってるだけだと思ってました。』
菊池先生に想いを馳せるように俯いたまま動かない須崎を、ただ見つめていた。
菊池先生も、どこかで須崎を想っているだろうか。
卒業だなと、少しは考えたりしているだろうか。
「菊池先生はその全部を隠してここを去った。気持ちを封じ込める瞬間を、俺は見たんだ。」
『知らなかった…』
「だから俺も自分の想いに蓋をしようと思った。菊池先生がそこまでの覚悟で封じた想いを、俺が溢れさせちゃいけないって…思ってたんだけどな…」
須崎の人生を壊したくないと言った、最後に会ったときの菊池先生を思い出して声が震えた。
止められなかった涙が頬をつたったとき、須崎が俺の手を優しく握った。
「俺だって…俺だってずっと須崎を想ってたんだ。」
『新田先生。』
そっと胸に身体を預けてきた須崎をぎゅっと抱きしめる。
1度知ってしまったら放したくないと思う温もりに、胸が締めつけられた。