1日限定両想い

脱衣場で服を脱ぐと、微かに煙の香りがした。

お肉美味しかったなと気持ちを逸らして、できるだけ何も考えないようにシャワーを浴びた。



「お風呂ありがとう。」

『あぁ。眠かったら先に寝てていいからな。』

「うん。」


リビングへ戻ると、青波さんはスマホを眺めてぼうっとしていた。

一瞬、感情の読めない表情にどきっとする。



「何かあった?」

『いや、竹石先生からメールきてて。俺に話したいことがあるって。』

「竹石先生が?」


竹石先生は高校時代にお世話になった先生だ。

1年と3年の担任で、祖母のことで大変だったときもずっと心配してくれていた。

久しぶりに聞く名前に懐かしさが過って、いろんなことを思い出す。



「話ってなんだろうね。」

『さぁ…俺何かやらかしたかな。』

「青波さんは大丈夫だよ。気になる生徒さんの相談とかじゃない?」

『だといいけど…。』


少し首を傾げながらお風呂場へ消えていく青波さんを見送る。


その背中からも、微かに煙の香りがした。



< 188 / 250 >

この作品をシェア

pagetop