1日限定両想い
脱衣場で服を脱ぐと、微かに煙の香りがした。
お肉美味しかったなと気持ちを逸らして、できるだけ何も考えないようにシャワーを浴びた。
「お風呂ありがとう。」
『あぁ。眠かったら先に寝てていいからな。』
「うん。」
リビングへ戻ると、青波さんはスマホを眺めてぼうっとしていた。
一瞬、感情の読めない表情にどきっとする。
「何かあった?」
『いや、竹石先生からメールきてて。俺に話したいことがあるって。』
「竹石先生が?」
竹石先生は高校時代にお世話になった先生だ。
1年と3年の担任で、祖母のことで大変だったときもずっと心配してくれていた。
久しぶりに聞く名前に懐かしさが過って、いろんなことを思い出す。
「話ってなんだろうね。」
『さぁ…俺何かやらかしたかな。』
「青波さんは大丈夫だよ。気になる生徒さんの相談とかじゃない?」
『だといいけど…。』
少し首を傾げながらお風呂場へ消えていく青波さんを見送る。
その背中からも、微かに煙の香りがした。