1日限定両想い

「仕方ないね。私なら大丈夫だから。」

『寂しい想いさせてしまうかもしれないけど、どうしても俺がちゃんと向き合いたいことなんだ。』

「うん。分かってるよ。」


青波さんの仕事に対する姿勢は私もずっと見てきた。

私のわがままで邪魔したくないし、思い切り打ち込んでほしい。



「また落ち着いたら連絡して。」

『ありがとう。』

「待ってるから。」


自然と出てきた"待ってる"に、自分で驚いた。

そんな念を押さなくても、青波さんは必ず連絡をくれるはずなのに。



『なぁ、心詠。』


しばらく夜の街を走って自宅まで送り届けてくれたところで青波さんが改まって名前を呼ぶ。



『今でも…』

「あ、」


何か言いかけたところで道の先から歩いてくる人影に気付いた。

仕事から帰ってきた父の姿にとっさに隣の青波さんを見る。



「もう1回車出して。」


その横顔に表情はなくて。

いつかちゃんと挨拶しないとと言ってくれたことを思い出すよりも、今この場から逃げることを選んでいた。


今でも…という言葉の先は、結局最後まで聞き直すことはできなかった。



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