1日限定両想い
仕事が盆休みに入る前日、帰宅してすぐに震えたスマホには知らない番号が並んでいた。
少し前から何度かかかってきているが、ずっと無視してきた。
だからそのとき通話ボタンをタップしたのは完全なる気まぐれで。
『お久しぶりです。』
どうせ間違い電話だろうと思っていた思考はその声を聞いた瞬間に停止した。
東京でできた、“会いたくない人”。
「なんで…」
『すみません。竹石先生から聞きました。』
その名前を出されると何も言えなくなってしまう。
俺に対して真剣に叱ってくれた先輩であり、そのことを後悔させてしまっている先輩。
『今大阪にいるんですけど。』
「は?」
『もっと言うとご自宅の近くまで来てるんですけど。』
「はぁ?」
思わず大きな声が出て、スマホの奥からボリューム考えてくださいよという悲痛な声が聞こえる。
なぜ住所を知っているのかも、もはや聞く必要はない。
いきなりインターフォンを押さなかったことはこいつの気遣いだろう。