1日限定両想い
午後の授業は2年2組からだった。
「整列しろ。全員いるか?」
グラウンドで声をかけると、数人の生徒がきょろきょろと辺りを見回してから手を挙げた。
『須崎さんがいません。』
「欠席か?」
『いや、午前中はいたと思います。いた…よね?』
手を挙げていた女子生徒が不安そうに周囲に確認する。
いたと思いますってなんだよ。
『うん、午前中はいたよね。お昼休みから見てないけど。』
『いないの気付かなかった。あの子なんか薄いよね。』
「静かにしろ。誰か何か聞いてへんのか?」
不快な会話を質問で遮ったけれど、誰からも言葉は返ってこなかった。
なんだよ薄いって、なんで気付かないんだよ。
「ちょっと見てくるから、お前ら俺が戻るまで走っとけ。」
『え〜』
「今日は最初から長距離や。準備体操はちゃんとやれよ。」
渋々横に広がって準備体操を始めたのを確認して、俺は須崎を探すため校舎に戻った。
体育だということを忘れているのか?遅れているだけなのか?
なぜか焦る気持ちを抑えながら歩調を速めた。