1日限定両想い
「心詠。」
『うん。』
突然手を放して立ち止まった俺を心詠がただ見つめる。
何も気付いてないようで全てを悟っているような瞳に吸い込まれそうだった。
「楽しかったな。」
『私も。』
「楽しかったよ、今日まで。」
『…え?』
広くて綺麗な芝生の公園を、沢山の人たちが楽しそうに通り過ぎて行く。
流れる時間も空気も、心詠とならば特別だった。
「心詠と出会って、こうして付き合えて、幸せだった。」
『どうしたの急に。何言ってるの?』
「急じゃないんだ。考えて考えて、出した答えで。」
『聞きたくない。』
涙を溜めて首を振る心詠に胸が詰まる。
もしかしたら…
もしかしたら心詠は本当に俺を好きになってくれていた…?
「ありがとう。」
『嫌だよ。』
「ありがとう…。」
簡単なことだと思っていた。
もう俺を好きだと思い込まなくていいよと、ただ一言告げればいいだけだと思っていた。
なのに。
噛み締めた唇から、次の言葉を出すことができない。