1日限定両想い
『青波さん。どうしたの?』
そっと距離を詰めた心詠が俺の手を握る。
柔らかくて温かい、ずっと守っていきたいと思っていた優しい手。
「菊池先生に会う為に大阪へ来たんだ。」
『え…?』
その手が、すとんと下に落ちた。
俺の手を離れて。
菊池先生という名前を聞いて動揺する姿に、先程抱いた想いを打ち消す。
確かに俺を好きでいてくれたかもしれない。
でもそれ以上に、強く刻まれた存在がある。
「竹石先生が居場所を教えてくれたんだ。昨日会って話してきた。」
瞳を揺らしたまま言葉を失う心詠をまっすぐに見てしまわないように、ただ話を続ける。
「全然変わってなかったよ。あの頃の菊池先生のままだった。それがどういう意味か分かるか?」
『どう…?』
「今も心詠が好きってことだよ。」
『そんなの…。』
信じられないという風に心詠が首を振る。
お互い長い時間をかけて忘れようとしてきた。
それでもどこかで、菊池先生はいつも俺たちの中にいた。