1日限定両想い
「心詠と出会ってから、苦しいことばかりだったな。」
涙で言葉を返せなくなっていることを分かっていて、ただ想いを連ねる。
「でもやっぱり、俺は幸せだった。一緒にいられて嬉しかった。」
『青波さん…』
「1番つらかったときに、傍にいてやれなくてごめんな。」
菊池先生がいなくなったとき、俺はただ日に日に暗く落ち込んでいく心詠を見ていることしかできなかった。
どんなときも、俺たちの間には菊池先生がいた。
「幸せになれよ。今度こそ、絶対に菊池先生を失うな。」
『ありがとう…本当に、ありがとう…。』
「じゃあな。」
はっとしたように顔を上げた心詠の視界に入ってしまわないように背中を向けて、そのまま歩き去った。
「さよなら。」
力なく呟いた声は風に溶けて消えていった。
『さよなら。』
なのに、心詠の声は風に乗って俺の元へ届く。
自分で選んだはずの別れが、一方的に突き付けられたような鋭さで胸を貫いた。
大切な人は、誰にとってもいつもひとりきりだ。