1日限定両想い
授業を終えて職員室へ戻ったが、ドアを開くのをやめてそのまま通り過ぎた。
保健室の前まで来てからしばらく迷って、でももう教室へ戻っているだろうと気持ちを楽にしてからノックした。
『あら菊池先生。どうかしました?』
「いや、須崎。どうかと思って。」
『あぁ。』
俺と保健室というまず結びつかない組み合わせに里谷先生は不思議そうだったが、須崎の名前を聞いて納得したようだ。
入り慣れない保健室へ若干遠慮がちに入ると、テーブルの上に見覚えのあるカバンを見つけた。
須崎が弁当を入れていたものだ。
『今はよく眠ってる。さっき新田先生も来たんだけど、顔だけ見て戻ったよ。』
「そうですか。」
『食欲もないみたいで。熱はないから風邪じゃないと思うんだけど。』
俺の視線に気付いたのか、里谷先生がそっとそのカバンに触れた。
『驚いた。体調悪くてって言い出した途端泣き出して。』
「え?」
カーテンが閉まったその先で、須崎が寝ている。
話し声に起きていないだろうかと心配になったけれど、確かめることなんてできない。