1日限定両想い
次の授業時間が迫って職員室へ戻った。
菊池先生はもういなくて、話すことはできなかった。
「須崎?」
最後の授業を終えた後、外廊下を歩く須崎を見つけて思わず声をかけた。
「もう大丈夫なのか。」
『はい。荷物、届けてくださってありがとうございました。』
「それはいいけど、迎えに来てもらわなくていいのか。」
『大丈夫です。』
まだ少し顔色の悪い姿に心配になるが、あのときの拒絶が思いの外俺の中に深く残っていて会話を続けられなかった。
「送ろうか。」
『え?』
「いや、まだ顔色悪いし。」
『本当に大丈夫なので。さようなら。』
小さく頭を下げて逃げるように走り去った須崎の背中をただ見送る。
俺、結構生徒から信頼されてる教師だと思うんだけどな…。
密かに自信をなくして立ち尽くしていたが、須崎が駆けて行った方向がふと気になった。
校門の方向でも教室の方向でもない、部室棟の方。
部活には入っていないと聞いていたけどな。