1日限定両想い
なんとなく気になって後を追うと、角を曲がったところでその姿を見つけた。
遠慮がちに握るドアノブは空手部のものだった。
ただ今はもう使われていない、以前の部室。
そんなところに何の用が…?
そう思ったときに桜木の顔と並んで歩いていた2人の姿が過ぎった。
桜木を探しているのだろうか。
『何してんねん。』
「えっ?」
ひとり考えを巡らせているところへ突然声をかけられて、素っ頓狂な声が出た。
振り返ったところに立っていたのはその関西弁通り菊池先生だった。
「いや、あの。なんでもないです。」
『挙動不審やったで。』
「すいません。あ、桜木!桜木探してて。」
『まだ教室におるんちゃうか。なんか用?』
とっさについた嘘ですとは言えず言葉に詰まっていると、背後から控えめな足音が聞こえてきた。
「須崎。」
『菊池先生。』
俺が名前を呼ぶのとほぼ同時に、須崎が菊池先生を呼んだ。