1日限定両想い
俺たちの話し声が聞こえて戻ってきたのだろう。
そこで菊池先生を呼んだことで、須崎がここに探しにきたのは桜木ではなく菊池先生だと知った。
『須崎、もうええんか。』
『はい。体育休んじゃってすみませんでした。』
『そんなんええけど。』
『それと…』
何か話そうとした須崎が俺を見上げて、聞かれたくない話なんだと思った。
でもなぜか立ち去り難くて、気付かないふりをしてしまう。
『入るか。まだ部活まで時間あるし。』
『いえ…やっぱり今日は大丈夫です。早く帰らなきゃいけないので。』
『そうか、気をつけて帰れよ。』
『はい。さようなら。』
俺にももう1度頭を下げると、須崎は今度こそ校門の方へ駆けて行った。
残された俺たちの間に、なんともいえない空気が流れる。
いや、俺だけか。
思いがけず須崎と菊池先生の親密な空気を感じて居心地が悪い。
入るか?って。
須崎がここに来ていたということは、2人は以前にもここで過ごしたことがあるということだ。