1日限定両想い
「菊池先生、須崎のこと知ってたんですか。」
『生徒やから知ってるやろ。』
「そうじゃなくて、その…」
『知らんで、俺は何も。』
俺を残して立ち去ろうとした菊池先生の背中を追いかける。
「須崎とよく話すんですか。」
『全然。』
「でも今、」
『何必死になってんねん。放っといたれや。』
「放っておくって…。」
分からない。
菊池先生も、そんな菊池先生を訪ねる須崎も。
菊池先生が里谷先生から話を聞かなかったのは、興味がないだけじゃなくて、もう本人から聞いているからなのか。
放っておけなんて、須崎のことを知っているのだとしたら余計に分からない。
「放っておけないから、俺はどうすればいいか考えて…。」
俺の呟きは、歩き去った菊池先生には届かなかっただろう。
なぜ。
なぜ、こんなにも1人の生徒が気になるのか。
事情のある生徒なんていくらでもいる。
問題のある生徒も、手のかかる生徒も。
だけど菊池先生との距離の近さを見て、こんなにも心が騒ぐのは須崎だけだった。