1日限定両想い
「すごいな。」
俺の呟きに須崎が不思議そうに顔を上げた。
いつも持っているカバンの中から取り出した弁当はとても綺麗な彩りとバランスできっちりと詰められていて、思わず声が漏れたのだ。
『基本昨日の残り物なんですけどね。』
「夕飯もお前が作ってんのか。」
『母が作ってくれる日もありますよ。』
それは無意識に褒めるような色が滲んだ俺の言葉に対する謙遜というよりも、母親が作っていないと思われることをフォローするような優しい声だった。
母、という大人びた呼び方が一瞬高校生であることを忘れさせる。
「悪い。」
『え?』
「いや、この前から何回かお前て言うてるかも。」
『ふふっ。』
そんな須崎に対して自分が急に子供みたいに思えて謝ると、須崎が声をあげて笑った。
今まで見てきた小さな笑みではない素直な反応に、カップ麺を食べる手が止まった。
『そんなの全然気にしてないですよ。』
「いや、でも悪かった。これからは気をつける。」
なんとなく目を合わせないように俯いて麺をすすり始めても、しばらく楽しそうな笑い声が聞こえていた。