1日限定両想い
「何がそんなおもろいねん。」
『だって、わざわざ先生が謝るから。』
「今の若いのはすぐそういうの言うやろ、パワハラとかセクハラとか。」
須崎がそんなことを言う子ではないのは分かっているが、癖でもお前と呼んでしまいたくない気持ちがあった。
『菊池先生は、優しいですよ。』
そんな感情があったことに自分で驚いていると、小さな呟きが聞こえた。
ちゃんと聞こえたと伝えるために顔を上げると、もう笑っていない須崎がまっすぐに俺を見ていた。
『昨日、保健室に来てくれましたよね。』
「あぁ、うん。」
『あのとき、本当は私起きてて。』
引かれたカーテンのこちら側で俺と里谷先生がした会話を思い出す。
あのとき、もし須崎が起きていたらと思っていた。
『そういうことペラペラ話さない方がいいって、菊池先生が言ってくれた。』
「それは…」
『すごく嬉しかったんです。』
家族が大変、限界が来なければいい、里谷先生が言ったことは確かに俺の心に引っかかった。