1日限定両想い
私がお弁当を食べる斜め前で、菊池先生はいつもカップ麺を食べる。
初めてここでお弁当を食べてから、たまにここに来るようになった。
何度か来ているけれどカップ麺ばかりで、先生の食生活ってこんな感じなんだと驚いた。
そういえばあの日、菊池先生の車が停まっていたのは牛丼屋さんだった。
「あの…」
お互い無言で食事しながら、確実に話すタイミングを窺っていた。
菊池先生が食べ終わるのを待って声をかけると、椅子をくるっと回した先生がこちらを見た。
『ごめんな。』
「え…?」
私が何から話そうか迷っていると、ふと謝られて顔を上げる。
黙っているだけで怒っているように見える表情も、しっかり向き合えば決して怒ってなんかいないと分かる。
むしろ心配してくれているがゆえに険しい表情になってしまうのだ。
『須崎の母親から聞いてしもた。その…おばあさんのこと。』
あの日私が家に入った後で1人玄関を出て行った母が、菊池先生と話していたことは知っていた。