1日限定両想い
家の中の様子が変わり始めたのは、無事に高校受験を終えてほっとしていた頃からだった。
祖母の物忘れがひどくなり、何度も同じ話をするようになった。
それは誰にも止められるものじゃなくて、戸惑っているうちに症状はどんどん進行していった。
両親は共働きで、父親の仕事は出張ばかりでほとんど自宅に帰って来られない。
学生の私と弟にできることはあまりにも少なく、祖母の面倒を見ていたのはずっと祖父だった。
そして、身体を壊してしまった。
『おかえり。』
「早いね。」
帰宅すると珍しく先に母が帰っていた。
でも手には大きな荷物を持っているから、これからまた病院へ行くのだろう。
『ご飯作っておいたから、おばあちゃん起きてきたらよろしくね。』
「うん。」
自宅で倒れた祖父は、命は助かったけれど身体の麻痺と記憶障害が残った。
今もリハビリ病院に入院している祖父のために母は毎日のようにお見舞いへ行く。