1日限定両想い

「とくに、変わりはないですね。」

『そうか。俺んちも一緒だな。』


桜木先輩とは、祖父のお見舞いで行ったリハビリ病院で出会った。

先輩は校内の有名人だったから私の方が先に気付いていたけれど、声をかけてくれたのは先輩からだった。

ロビーの椅子に座っていた私に『同じ制服だね』と笑いかけてくれた先輩の笑顔がとても優しかったことを今でもよく覚えている。



『相変わらず毎回お前誰だって言われるし。』

「言ってくれるだけ元気じゃないですか。」

『そうだよな。』


先輩は空手部の主将で、制服を着ていると余計にその体格の良さが際立つ。

だけど相手に威圧感を与えないのは、その朗らかさと人柄だろう。



『ばぁちゃんの施設、見つかった?』

「いえ、まだ…。」

『そっか。』


だからあのとき、私はつい話してしまった。

祖父が入院していること、祖母の介護をしていること。


あのときはまだ竹石先生にも何も話していなかったのに、知られたくないと思う前に言葉が滑り落ちていた。



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