1日限定両想い
『早くどこか見つかるといいな。』
「先輩のおじいさんも。」
先輩のおじいさんは介護施設に空きが出るのを待っている。
私の祖母も、施設が見つかることを待っている。
似たような環境にいることも、同じ気持ちを分かり合えることも、先輩は私にとってとても貴重な存在だった。
『あとこの前…』
しばらく黙ってお弁当を食べていると、先輩が不意に気まずそうに呟いた。
その一言で、いろんな光景と後悔が一気によみがえる。
『ごめん。俺、何もできなくて。』
「そんな…先輩は何も…。」
久しぶりにお見舞いに行った祖父の病院で、弱っている祖父の姿にどんどん人が変わっていくような祖母の姿を思い出して、1人泣いてしまった。
人目のないところを探したつもりだったけれど、思いがけず先輩に遭遇した。
先輩は驚きよりも申し訳なさの方が大きい顔で大丈夫かと聞いて、そっとその場を離れた。
今も先輩はとても申し訳なさそうな表情をしているけれど、無理に踏み込んでこないその距離の取り方に、私はむしろ救われていた。