1日限定両想い
静かな鼓動。
【Wataru Side】
空き時間だったため校内を見回っていると、2年2組の教室がやたらと騒がしかった。
新田のクラスだ。
そしてこの時間も新田の授業のはずだ。
「おいお前ら!うるさいぞ!」
少し覗き込むと新田の姿はなく、騒ぎも収まりそうになかった。
ドアを開けて怒鳴ると、一瞬にして教室は静まり返った。
「授業中やろ。新田は?」
『なんか須崎さんがいきなり倒れて、保健室に運んで行きました。』
「倒れた?」
さっと視線を動かすと、ひとつの机が空いていた。
教科書やノートは開かれたままで、ほんの今までここにいた温もりがまだ残っているようだった。
『怖かったよね、急に。』
『体調悪いなら最初から保健室いれば良かったのに。』
『新田先生の気を惹きたいんじゃない。』
「余計なこと言うてんと自習しろ。」
ひそひそと話す女子生徒の声が鬱陶しくて仕方ない。
そんな声から逃げるように、そして何よりも須崎のことが気になって教室を出た。