1日限定両想い
今はまだ好きではない。
だけどこの先、その不器用な優しさに触れる度に私は菊池先生を好きになってしまうのだと思う。
だから簡単には頼りたくない。
変な誤解も、されたくない。
私が菊池先生と2人でお弁当を食べていることは、あまり知られてはいけないことなのだろう。
新田先生はそれを知っていて、あのときやんわりと伝えてくれたのかもしれない。
それでもお昼休みになれば、私の足は自然とそこへ向かってしまうのだけど。
そんなことを考えていると眠気がやってきて、ベッドへ戻ろうとするとまた微かな音が聞こえた。
「はぁ…。」
溜め息をついてみたところで状況は変わらない。
祖母だって苦しいはずだ。
自分が誰だか分からなくて、一緒に暮らす私たちも誰だか分からなくて、ずっと傍にいた祖父は入院してしまって会えない。
もう1度階段を降りて祖母を落ち着かせ、眠ったのを確認してから部屋へ戻った。
結局私が眠れたのが何時だったのか、時計を見る余裕さえもなかった。