1日限定両想い
『須崎さん?』
翌日の昼休み、菊池先生がいるあの部屋へ行こうかどうか迷っているところを呼び止められて足が止まった。
疑問系で私を呼んだのは英語教師の原(ハラ)先生で、その探り探りな呼び方に本当は私のことなんてちゃんと認識していないのだと分かる。
『あのさ、先週出した課題の提出今日までなんだけど。』
「えっ?」
『まだ出してないよね?』
「すみません…。」
完全に忘れていた。
頭の片隅に置いていたはずが、日々の慌ただしさで抜け落ちてしまっていた。
『今出せる?職員室に持って来てくれればいいから。』
「すみません…忘れてました。」
『忘れた?』
忘れたという一言に原先生の顔色が変わる。
その瞬間、これは言い訳をして大目に見てもらえるものではないと諦めた。
『忘れたってさ、あれだけ授業でも提出期限守るように言ったよね。』
人通りの少ない廊下に原先生の低い声が響く。