1日限定両想い
でも今私の手は新田先生に掴まれていて、きっとこれから課題をさせられることになるのだろう。
あのプリント、今もバッグに入ってるかな…。
だけど新田先生が向かったのは教室ではなく、相談室だった。
鍵を開けて使用中という札をかける。
『手、痛かっただろ。ごめんな。』
「いえ…」
週に何日かスクールカウンセラーが来ていることは知っていたけれど、相談室に入ったことはなかった。
今日は出勤日ではないのか、カーテンが閉められた室内は薄暗くて静かだ。
『大丈夫か?』
周囲から遮断されたことで緊張がほどけて、今になって原先生の言葉が刺さった。
足が震えて、涙が流れる。
『我慢しなくていいから。』
慌ててぐしゃぐしゃと涙を拭う私の手を新田先生が掴む。
だけど泣き顔を見られるのが嫌で、強く振り払った拍子にその場に座り込んでしまった。
ずっと握ったままだったお弁当バッグが手から離れて飛んでいき、思いの外大きな音を立てて床に落ちた。