1日限定両想い
『ごめん。』
焦ったように隣にしゃがんだ新田先生の手が、後悔したようにきつく握られている。
違う。
こんな風に拒みたかったわけじゃない。
『さっき余計なことしたよな。聞いてて腹立って、つい…。課題の提出が遅れた理由は後で俺がちゃんと話して分かってもらうから。』
私よりもずっと苦しそうな声で絞り出す新田先生に今伝えたいことは一言だけなのに。
とめどなく流れる涙が、まとまらない思考が、私の声を封じてしまう。
せめて余計なことでも私が怒っているわけでもないことは伝えたくて、必死に頭を振るけれど伝わった実感がない。
『須崎…俺はどうすればいい?俺が須崎にしてやれることはなんだ?』
そんなに悲しそうに言わないでほしい。
原先生の前から連れ出してくれたことが嬉しかったのに。
ありがとうございました。
ただ、それだけを伝えたいだけなのに。
なんとか声を振り絞ろうとしたとき、すっと目の前に光が射した。
その方向へ目を向けると、ドアを開いて立っている大きな足が見えた。