秘密の片想い

「面白い子だね。彼女」

「ええ。すごくいい子です。三嶋とお近づきになりたいって」

「へえ。なに? やきもち?」

「は? そんなわけ」

 見上げた先の、三嶋の視線に捕まった。
 彼の瞳は楽しそうに弧を描く。

「やっと、こっち見た。三嶋呼びも久しぶりだな」

 ニッと歯を見せ笑う彼に、敵うわけがない。

「今さら、呼び方なんて」

「そう? 三嶋さんって呼ばれると寂しいけどな、俺は」

 彼は変わらない態度でスマホを取り出し、どこへ行こうかと検索している。
 スマホを持つ、綺麗な長い指先に目がいきそうになり、目を伏せる。

「この先に、安くて美味しい定食屋さんが」

「そう。なら、そこにしよう。再会を祝して俺が奢るよ」

「いいよ。そんなの」

「そんなのって言うなよ」

 再会を祝したりしないで。
 言いたい言葉を飲み込んで、先を歩く三嶋の後に続く。
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