秘密の片想い

 その日も、研修で初めて配属された営業所の不満を漏らし、みんなに愚痴っていた。

「私の営業所のとこの所長、営業行かせてくれなくて」

「先見の明あり、だな」

 私の愚痴を真剣に取り合わず、三嶋は感慨深そうに腕を組んで頷いている。

「なによ。営業先でやらかしそうって言いたいわけ?」

 不貞腐れて文句を言うと、フォローなのかよくわからない言葉をかけられる。

「シーはぼんやりしてるから、心配って意味」

「三嶋は私のお父さんなわけ?」

「お父さんはやめてくれよー! せめてお母さん?」

 これにはケンケンが笑った。

「お母さんなら、いいのかよ!」

 笑い上戸のケンケンは、ツボにはまったらしく、お腹を抱えて涙まで流している。
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