秘密の片想い
「どうして、夜にひとりで歩いてるんだよ」
「え、それは飲み会で」
私は握られた手が帯びる熱に戸惑って、気もそぞろになっていた。
酔っているからって、いつも適度な距離が二人にはあって、それは正しい同期の距離だった。
それなのに、どういうわけか今はその距離を飛び越えている。
「ダメだろ。シーは可愛いんだから」
いつも通りの口調で言われ、どことなく安堵する。
私も幾分かは酔っていたし、初めて繋ぐ手と手にドキドキしながらも、酔っ払い二人は楽しく歩いた。
「なあ、俺ん家で飲み直さないか」
「いいね! 飲もう! 飲もう!」
後から思えば、三嶋の家に行ったのは、これが最初で最後だったし、考えなしだったと思う。