秘密の片想い

 彼のアパートに着くと、靴を脱いでそれから、再び彼に手を引かれる。

「いい夢見てるよなあ。うちにシーがいるなんて」

 そっか。夢かあ。

 私も夢見心地で、言う。

「うん。三嶋がいるなんて嬉しいなあ」

「ハハ。シーがデレてる。珍しい。いつも、俺ばっかり。好きって言っても応えてくれないし」

「三嶋だって、冗談しか言わないもん」

 好きだなんて、初めて言われた。

 酔っ払いの戯れ言だってわかっているのに、気持ちが浮き足立ちそうになり、顔がにやけてしまう。

「俺はいつも本気だって。ほら、スーツ。シワになるから脱いで」

 都合がいい夢は、三嶋がすごく優しい。

 いつももなんだかんだと優しいけれど、どちらかと言えば子ども扱いで、今は女性として扱われている気がする。

「ん、いいよ。シワになっても」

「ダメだったら。ほら」

 ジャケットを受け取ると、ハンガーにかけてくれている。

「よし、飲もう。飲もう」

 冷蔵庫から出したビールを受け取り、乾杯する。

 そこからは夢見心地で、頬に手を添えられた気がする。

「シー。愛してる」

 三嶋が言うはずもない甘い囁きを聞いて、目を閉じた。
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