秘密の片想い

 電話の音で目を覚ます。

「はい」

「もしもし。俺、三嶋だけど」

「うわっ!」

 飛び起きると頭が痛い。

「イタタタ」

 電話の向こう側では、笑い声が聞こえる。
 いつもの三嶋だ。

「あの、さ。昨日って、俺ん家で飲んだっけ?」

 突然、核心に迫る質問をされ、見えていないのに、力一杯頭を振るう。

「イタタタ」

 お陰でまた頭が痛い。

「大丈夫か? 俺、その、なんか、やらかした?」

 やらかしたって、散々な言い方。

 だから、余計な見栄を張った。
 そんな見栄、張らなきゃいいのに。

「ううん。昨日は三嶋をアパートまで送り届けて、それからすぐに帰ったよ」

「そっか。そうだよな。うん」

 ものすごく安堵している声が聞こえて、言わなくて良かったと、こちらも安堵する。

 なにかあったのかは、わからない。
 わからないのなら、無かったことにした方がいい。

 そう思った。

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