秘密の片想い

 武内所長と連れ立ってビルへと入ると、タケウチ保険事務所では先輩でありつつ、年齢的には年下の石原真里奈(いしはらまりな)が嬉しそうに報告する。

「今度の本社から来た、代理店営業の人。一押しでイケメン!」

 興奮気味に両手を上下させ、あたかもビックニュースのように訴える。
 手の動きに合わせ、ふんわりカールさせている髪も揺れる。

「そう、よかったね」

「なんですか、志穂さん。乗り気じゃないんですね」

 たまにしか顔を見せない代理店営業担当者に、一喜一憂できる真里奈を可愛いとは思う。
 それと同時に若いっていいなあと、どこか冷めた目で見てしまう。

 真里奈は25歳。
 まだまだ若い。

 そういう自分は、2つしか変わらないのだけれど。

 朝の短い5分朝礼に、所員が集まる。
 武内所長の横には頭ひとつ分飛び出る、高身長の青年が立っている。

 視界に入れないようにしても、無理があった。
 やっぱり元同期の三嶋だ。

 どうしてここに、という疑問は解消されないけれど、どうしてか三嶋はここにいる。

 私は、他の男性所員の後ろに隠れるように、小さくなった。
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