秘密の片想い

 どこか他人事のように話す三嶋が、うわ言のように呟く。

「なあ、やっぱ、夢じゃ、なかったんじゃないのか」

「え」

 ギクリとして、三嶋の顔を見る。
 息遣いの荒い彼を見上げ、胸の奥が波打った。

「ごめん。先に謝っておく」

 そう言って、三嶋はそっと頬に手を添えた。
 壊れ物を触るような手つきは、あの日を鮮明に蘇らせた。

 あの日、酔っていたくせに、彼は私に繊細に触れた。

 頬に触れた手は、優しく耳まで包み込み、くすぐったくて、首を竦める。
 あの日のまま再現されていき、彼がフッと小さく笑った。

「夢のままじゃん」

 そう言って、あの日と同じようにキスをした。
 あの日と違うのは、上がった息と、彼のカサついた荒れた唇。

「お、湯が……」

「ああ、うん」

 火を消した三嶋はカップ麺を作ろうとせずに、再び私に向き直った。

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