秘密の片想い

 確かめるように、上唇にだけキスをされ、それから下唇にも重ね合わせて離された。

 微睡んだ眼差しが、妖しく私を暴く。

「シー。俺……」

 なにかを言い淀んで、それからまた、私に触れる。
 その手は遠慮がちに私の肩に触れ、それから胸元へと降りていく。

 離されていた口元は再び重なって、それから首すじをなぞるように触れた。
 思わず体を捩って彼に縋り付くと、ハハッと何故だか彼が笑った。

「まずいな。本物だ。あの日より、全然本物だ。俺、馬鹿だったよな」

 上がる息で、三嶋は私の肩に頭を預ける。

「三嶋?」

「なあ、リョウって、怜生って呼んで」

 あの日も、そう言って私に呼ばせた。
 初めて、彼を名前で呼んだ。
 呼んだ時、その時に彼と私はひとつになった。

 もう誤魔化せない。
 私は息を飲んで、口を開く。

「りょ、う」

「うん」

 再び唇を重ねると、彼は私を強く抱きしめた。
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