秘密の片想い

 想像よりもずっと慣れた様子で、お粥を作ってくれた。

 テーブルに運んでくれて、三嶋と並んで座る。

「ありがとう。でも、冷蔵庫を当たり前に開けられて、ちょっと恥ずかしかった」

「あ、そうだよな。悪い。食材をちゃんと小分けにして、冷凍してあって感心した。莉乃ちゃんに、なにか食べさせようと思って。離乳食の冷凍を見つけた時は、ホッとした」

「そっか。助かったよ。泣かれたのに、ご飯食べさせようって思う辺りが、三嶋だよね」

 ふふっと笑うと、三嶋は複雑な顔をする。

「褒めてないだろ。それ」

「だって」

「なんていうか、俺にとっては未知の生物というか、野生動物を懐かせるには、みたいな。ごめん。莉乃ちゃんを野生動物扱いして」

 途中、吹き出した私に、三嶋は再び小さく謝った。

「ううん。思いもよらない視点で面白い」

 野生動物かあ。確かになあ。
 我が娘ながらに、理解できない時だってある。
 どうして泣くのって途方に暮れたり。

 三嶋はやっぱり、三嶋なんだなあと、どこか安心して、そして寂しくもあった。

 お互いに肝心な話はせずに、表面的な話だけして、笑い合った。
 このまま真実なんて、無くなってしまえばいいのに。
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