秘密の片想い

「まだ寝た方がいい」

「うん。もうずいぶんいいみたい。三嶋は、平気なの?」

「俺は、熱が下がって。シーの看病のお陰かな」

「そっか。薬が効いたんだね」

 つい、口を滑らせた言葉に、三嶋が顔色を変えた。

「薬って、そうか、おかしいと思ったんだ。俺がシーの薬を奪ったんだな」

「奪うだなんて。本当は勝手に他人に薬を飲ませたらいけないんだろうけど」

「人に薬を渡して、自分がダウンしてたらダメだろ。本当、シーは馬鹿だ」

「馬鹿って。そのあと、ちゃんと病院で私も薬を改めて飲んだし」

 ひどい言われように、もっと文句を言おうとして言葉を失った。
 三嶋は、真剣な眼差しで私を見ていた。

「な、なに。どうしたの」

「シー。キスしてもいい?」

「なにを、急に。だって、インフルエンザがうつっちゃうよ」

 どんな理由よ。もっとほかに理由が。

「それはもう、うつしあってるだろ」

 口をついて出た陳腐な断りの理由に、ご丁寧に対応されて、ことさら言葉に窮する。

 今さら確認されても、困ってしまう。
 そうかと言って、いいよとも言えない。

 言ってしまったら、なにかが崩れてしまう気がした。
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