秘密の片想い

「シーが心配だったのも、もちろんあるけれど」

 なにかを言い淀んで、言葉を切る三嶋が続きを話し出すのを、緊張しながら待った。

「あの日、なにがあったか知るために、ここに来た」

 ほとんどお互いにわかっている答え。
 その答え合わせに来たというの?

「知らない方が、いいこともあるよ」

 私が小さく言った声は震えて、格好がつかない。

「それでも、知りたいんだ」

 三嶋は私の頬に手を伸ばした。
 私が体を縮めると、その手は遠慮がちに頬に触れた。

 そして耳を包み込むように、添えられ、引き寄せられる。

「志穂」

 あの日も、夢でも、呼ばれたことのない呼び方で呼ばれ、心を揺さぶられる。

「愛してる」

 夢の中で聞いた、ずっと聞きたかった言葉を現実で聞き、胸を焦がす。
 抗えなくて、私は目を閉じた。

 ゆっくりと唇が重なって、確かめ合うようにキスをする。
 キスをするたびに胸の奥がキューッと苦しくなって、彼にしがみついた。
< 69 / 89 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop