秘密の片想い
彼は変わらない、真っ直ぐな眼差しを向けたまま告げる。
「俺、馬鹿だったよな。非難したっていいのに、どうしてしてくれなかったんだよ」
悲痛な訴えは、私の胸を抉る。
「夢じゃなかったんだろ? 全部」
あの日の答え合わせをした答えを、彼は言おうとしている。
けれど、それはもう意味を成さない。
「例え、そうだとしても」
私は声が震えないように、ギュッと手を握りしめて続けた。
「莉乃は男の人が苦手で、三嶋は子どもが嫌い。だから、仕方ないよ。私たちには縁が」
縁がなかったんだよ。
そう言おうとした声が遮られる。
「待てよ。勝手に子ども嫌いって決めつけるなよ。俺、いつそんなこと言った」
強く言われ、私もムキになって告げる。
「昔の彼女に避妊具に穴を開けられそうになったって、その時に」
目を見開いた三嶋が、息を飲んだ。
私は重ねて言った。
「それに、この前、私のアパートで。ちゃんと避妊してた」
そんなところに気づく、自分が嫌だった。