秘密の片想い

 月日は流れ、莉乃は3歳になった。

「こら! 莉乃! パパも!」

 見つかっちゃった。
 同じ表情で顔を見合わせる、そっくりな2人に苦笑する。

 今日は友達を招いてのパーティーで、その食事を2人はつまみ食いしていたのだ。

「もう莉乃は女の子なのに、食いしん坊なところは誰に似たのかしら」

 ため息混じりにこぼすと、準備を手伝ってくれている瑠夏が笑う。

「そりゃパパに似たんでしょ。隠すなんて無理ってくらい、見た目も三嶋に瓜二つじゃない」

 莉乃がパパ、つまり三嶋に似てると言うと、喜んで大騒ぎするから、あまり言わないようにしている。

 あの日、三嶋と話し合いをした日から、毎日のように三嶋はアパートにやってきた。
 泣かれようと拒否されようと、根気強く三嶋は莉乃と接した。

 一言、「だって俺の子だよね?」そう言えばいいところを、三嶋は言わなかったし、私もその点には触れなかった。

 そして、三嶋の中で莉乃との関係がきちんとするまで、彼は私に指一本触れなかった。

 そのせいか、未だに彼と2人っきりになると付き合いたての恋人同士のような雰囲気で、一緒に暮らしているというのに緊張する。
< 85 / 89 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop