秘密の片想い

「瑠夏の子は、どっちに似ているのかな」

 つんつんとお腹をつつくと、瑠夏は優しい顔をして言う。

「そうだね。どっちに似ても嬉しいなあ」

 幸せそうでいいなあ。
 私も和やかな気持ちになって、心が温かくなる。

「なあ、レオは……。っと、ごめん。こっちじゃなかった」

 ケンケンが照れたような顔をさせて、三嶋を探しに行く。
 ケンケンも結婚して可愛い奥さんがいるのに、瑠夏と久しぶりに会うと照れてしまうらしい。

 奥さんが知ったら悲しがらないかなあと、ちょっと心配になる。

「コップが足りないね。取ってくる」

 奥の部屋に仕舞い込んでいたお客様用のコップを探しに来て、三嶋と鉢合わせてしまった。

「あれ。シー。どうしたの」

「三嶋こそ」

 ケンケンのこと言えないや。
 私こそ未だに突然顔を合わせるとドキドキするなんて、どうかしてると思う。

 誤魔化すように、コップ探しに集中する。
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