秘密の片想い
「どうしてかな。シーに触れると、俺」
潤む瞳を閉じると、彼と息が重なりそうになったところで、遠くで呼ばれている声が聞こえた。
「ママ〜! パパは〜?」
フッと息を吐いてお互いに顔を見合わせると、三嶋はため息混じりに言った。
「子どもは好きだけど、いらなかったのも本音」
「え」
今さら驚くべき本音を激白して、どういうつもりかと不安な心持ちでいると、三嶋はニッと白い歯を見せた。
「もしシーと付き合えたとして、子どもがいたら邪魔されるだろ? 今みたいに」
遠くでは「ママ〜?」と探している声がまだ聞こえている。
「でも今は、もちろん莉乃は可愛いし。その莉乃に、どうやって見つからないようにシーとキスしてやろうかって、考えるのも楽しいなって。そろそろ、2人目も考えようか」
チュッと軽く唇を重ね、彼はくるりと体の向きを変えた。
「はーい。パパはいるよー。今行くからなー」
私は熱くなる頬を押さえ、声にならない文句を心の中で呟いた。
未だにこんなにも彼に恋しているのは、彼にも明かせない私の最大の秘密。