イルカ、恋うた

秘密

いつもの喫茶店に呼び出され、席に着くのも一瞬ためらった。


木田の横に、伊藤弁護士がいたのだ。


「悪いな、呼び出して。人が悪いよな。俺のいないとこで、新たな展開見せちゃって」


「……どうせ、少年のことはもっと早く調べていたんじゃないのか?お前のことだ。あの公園やその区の周辺の聞き込み、単独でもしてただろ?」


木田はタバコを吹かし、まあな、と仰け反った。


「事件と同時期に、補導された少年がいました。ひったくりの現行犯です」


と、伊藤弁護士は淡々と教えてくれた。


「……木田、どう思う?」


「って、急に言われても。さすがに俺でも……。当人はいないしなぁ……」


「え、いない?」


伊藤弁護士が、肘をつき、ため息の後に言った。


「出所後に、薬物中毒で亡くなったそうです。皮肉ですね、曾流会は壊滅、もちろん薬物は没収した後なのに。

まぁ、麻薬系の犯罪は、次々新たな組織が出てきますからね」


「凶器と奪われた拳銃だけど、御崎の部屋から発見されたんだよね?当時の新聞見たけど。

伊藤さんは、鑑識の報告書を見たんでしょ?当然、佐伯検事正も……」


俺が訊くと、彼は詳細を語る。


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