イルカ、恋うた
風景が動くまで、俺もジッとしてた。


発車すると、バックミラー越しに、遠ざかる父に視線を送った。


あれが、父を見た、本当に最後の姿だった。


新しい部屋で、俺はひたすら泣いた。


今まではなかった机や、パソコン。ベッド、ゲーム機…


流行りの漫画でいっぱいの本棚。


全然、嬉しくなかった。


それでも、倒れ込んだのは、煎餅布団じゃなくて、羽毛布団の上。

声を殺すようにして、泣いた。


何故か、あのイルカの絵を抱いて―…
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