イルカ、恋うた
「当然、裁判でも公開されました。御崎の部屋から出た銃にも凶器にも、指紋は付いていませんでした。

銃には、野村さんの指紋だけです。そこを指摘しましたが、やはり発見された、という事実には勝てません。

傷口も凶器も付着してた血痕も、一致してますしね」


再審請求は棄却。


首領のことを供述したという点を考慮され、極刑は逃れた。


公判では、首領の指示を否定しなかったのだ。


しかも、自分の部屋から決定的な証拠が出てきてしまって、彼は廃人のように、静かになった。


無期懲役、現在も服役中だ。


あれ、なぜ伊藤弁護士の所へ、本庁は来たのだ?


仮出所したなのなら、弁護士に訊かなくても、保護監察中だろうし……


「伊藤さん。結局、本庁が訊いたのは…」


「ああ、すみません。守秘義務とも思ったんです。でも、彼の所在も分かりませんし、水島君ならいいでしょう」


――彼?また、新たな人物が?


「実は、私は国選ではなく、御崎氏の弟さんの紹介で弁護人になったんです。本庁の刑事さんは、この弟が関与しているのでは、と考えているようです」


守秘義務、というわりには……

< 110 / 224 >

この作品をシェア

pagetop