イルカ、恋うた

決意

養父母はとても親切だった。


たとえ、高校を卒業間近な年になっても、父さん、母さんと呼ばない義理の息子でも…


申し訳ないとは思うのに、どうしても、ミラー越しの父の姿が忘れられなかった。


呼んだら、本当に消えてしまう気がするんだ。


だからこそ、恩返しをしなくては、と考えていた。


中学を卒業すると、就職して、二人に今までの学費や生活費を代えそうと考えていた。


しかし、


そんなもの気にするな。息子の為の資金など惜しくない。


高校は出なさい、と押され、俺は結局、高校まで行かせてもらった。


道は外さなかった。


二人に迷惑をかけないよう、目立たず、地味にもならず、ただ平凡に生きた。


俺はよく、物静かだとか大人しいと言われた。


会話が苦手だった。


恋人というものができたことはあるけど、長続きはしない。


「何考えてるか分かんない!」


「本当に私が好き!?」


と、大抵その台詞で別れる。


「お前、恋したことあるか?」


と尋ねてきたのは、中学から一緒の、木田裕太。


「ああ…無いかも……」


「俺なんか、初恋は幼稚園の先生だぜ」


「へー」


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