イルカ、恋うた

背中越しのイルカ

この日、俺は非番だった。


事件発生後、初めての休日だった。


昨夜は、強盗致傷の疑いのある男の取り調べに付き添った。


取調室に入ったのは、実は初めてだった。


実際に取り調べをしたのは、別の先輩刑事だったけど、非常に気を遣い、合間に十三年前の事件のことも重ねて考えてしまい、未だに頭に重だるさを感じてた。


朝が来ても、ベッドからなかなか出られなかった。


「久々にジョギングでもするかな?」


と言っても、いろいろと時間の決められた独身寮。


指定の時間までに、食堂で朝食を済ませ、八時頃に近所の公園にでも行こうと思ってた。


しかし、やっぱりだるい……。


とりあえず、掃除することにした。


机や二段ベッドを雑巾で拭いていると、出勤前の同室のやつに「自分の分もよろしく」と言われ、思い切って大掃除。


本棚にハタキをかけていると、A4サイズ用のファイルが目につく。


ハタキを置いて、それを手に取り、机の上で開いた。


リボンを付けたイルカ……。


相手がおらず、ひとりぼっち。


まるで、探すかのように、横を見つめてる。

そのイルカを、フィルム越しに撫でた。

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