イルカ、恋うた
その時だ。


携帯が鳴った。


岩居さんだった。


非番にかかってくるなんて、何かあったんだろうか?


まさか、彼女に何か!?


すぐに出ると、彼の声は、明らかにヘラヘラしている。


『ちょっと、降りておいでよ』


ああ、今度は何?


軽くイライラしながら、言われた通り、外に出た。


すると、寮の前に車があって、そっちに視線も神経も集中してた。


「おはよう、竜介!!」


急に横から、声をかけられ、「うわぁ」と驚いた。


「何よ。その反応」


美月は口を尖らせた。


「おはよう、って、何でいるんだよ」


「岩居さんがね、竜介は非番で暇してるから、寄っておいでって」


寄っておいで、って。
寮は女人禁制なんですけど……


こちらの心配は分かっているようで、岩居さんが車の窓から言う。


「ちょっと、話したいだけだって。そこの公園にでも行きなよ。俺は待ってるから」


なんだって、岩居さんはこんなに美月に協力的なんだろう。


彼女が、着てたパーカーの袖を引っ張った。


「……ダメ?」と上目遣いで、首をかしげる。


それだけで、ドキッとするのに、その際にイルカが揺れる。


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