イルカ、恋うた
「……パパね。ちっとも、口利いてくれない……。確かに、私が悪いんだけど、婚約破棄、勝手にしたから。

前にね、ケンカになった時は、お兄ちゃんが私が結婚嫌がってる、みたいなこと言っちゃって……。

本当はもう少し、パパが落ち着いてから、って思ってたけど、結婚したくないって、気持ち言ったの。

それから、当たり前だけど、ギクシャクしたまま……耐えられなくて、無断であの日、婚約破棄したから……余計に険悪になっちゃった…」


何か言わなきゃって思うのに、一緒になって落ち込んだ。


彼女はそれに気付き、「竜介、違うよ。竜介のせいじゃないよ」
と、言ってきた。


そして、俺はいつかと同じ考えを、再び起こした。


「でも、俺と再会しなきゃ、桜井検事ともあのまま……。そしたら、佐伯検事正とも仲の良い親子のままだったろ？」


美月も以前と同じ質問をしてきた。


「竜介は、私が他の人と結婚しても平気？」


――そんなわけない。


そう考えても、答えなかった。すると、彼女は続ける。


「刑事さんになるって、すごい競争率なんでしょ？パパに聞いたことがある。もし、竜介がなれてなきゃ、私達再会できなかった。パパのことは辛いけど、嬉しかった。私、会いたかったの」


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表紙・目次

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