イルカ、恋うた

初の対面

次の日、さっそく見舞いに行くという、彼女を迎えに行った。


公園以来、全く話す機会がなかったので、緊張してた。


だけど、門の前で、うつむき加減に、力なく佇む彼女の姿に、今度は落ち込んだ。


本来なら、岩居さんがいいんだろうな。


元気づけるとか、明るい雰囲気作りだとか、できない自分が情けなかった。


それでも、美月は俺が近づくと、微笑んだ。


今の俺は、ただ気遣って、無理して笑ってるとしか思えず、伊藤弁護士の、傍にいてあげて、といった理由も理解できなかった。


――俺なんか、役に立たないのに…


公園のこと、本当に気にしてないのか、俺に気を遣ったのか分からないけど、美月は相変わらず、笑顔で……


「ほら、今日もつけたのよ」と、イルカを揺らす。


あげたことは後悔してない。


言ったことも本心だった。


なのに、確実に、後悔してる情けない自分がいる。


「竜介、どうしたの?まだ、気分が悪い?」


体調不良による遅刻といった嘘が、彼女にも伝わってたらしい。


「何でもない」


美月を後部座席に座らせる。


ドアを閉める前に、彼女が不安げに俺を呼ぶので、腰を曲げ、「何?」と、視線を合わせた。

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