イルカ、恋うた
上着の敷き、彼女を座らせた。


彼女は、横に座る俺の腕にしがみつく。


「逃げないから」


と、笑いながら言うと、美月は頬を膨らませた。


「くっつきたいだけだもん」


「そう……」


「竜介」


「うん?」


「私に会えて嬉しかった?」


急に、彼女は不安げに顔を合わせる。


「ああ、嬉しかったよ」


「本当に?嘘じゃない?絶対?また、私が怒るって思って……んッ」


まだまだ、マシンガン並に訊いてきそうだったから、その唇を塞いだ。


唇を離すと、美月は拗ねた。


「こんなキスやだ」


「嘘じゃないって証拠」


美月は真っ赤になる。

夕日よりもずっと…


「暗くなる前に、帰ろう」


「や……もう少し」


「たく、刑事になって、初めての仕事が、この身辺警護だぞ。君を安全にウチに送らないと……今日は岩居さんだけど」


「私の警護が初めて?」


彼女は目を輝かせて笑う。


「……そんな、嬉しい」

「うん。だって、やっぱり凄い確率なんだよ。私達の再会」


ずいぶん、美月は確率にこだわるな。


それがイルカの奇跡だとしたら、この現実はどうだ。

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