イルカ、恋うた
佐伯検事正の過去、隠蔽された可能性のある真実にぶち当たり、彼はもしかしたら、それが原因で襲撃を受けた。


明らかになれば、彼女を傷つけることに……


目を伏せると、美月がすかさず声をかける。


「どうしたの?」


上目遣いに、またドクンと胸が鳴る。


「もう一回、キスしていい?」


「うん」と、彼女は目を閉じた。


終わった後、彼女はクスクス笑う。


「何?」


「刑事さんがいいのかな、って」


「今は違うよ。仕事中じゃないし……って、したことあるな。じゃあ、もうしない」


「えッ」と、彼女は声をあげる。


目が合うと、恥ずかしそうにうつむく。


そんな女性を、そっと抱き締めた。


「守るから。絶対、何があっても……」


聞こえなかったようで、「ん?」と聞き返してきた。


俺は彼女を腕の中に置いたまま、逆に質問した。


「なんでもないよ。美月の夢って、翻訳家だっけ?」


「どうして知っているの?話したっけ?」


「いや、ちょっと小耳にはさんだだけ」


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