イルカ、恋うた
送り主の住所が書いてなくて、返事は出せなかった。


中学卒業時に来たもので、最初で最後の手紙だった。


『竜介へ

あれから三年。お変りないですか?私は知人を通じて、居酒屋を手伝うことになりました。

学生服はどうでしたか?学ランだと伺いました。きっと、似合っただろうと思います。

どうか、お体に気をつけて。立派な大人になってください。

勝手な父ですみません。言う資格はないでしょうが…。乱筆ですみません。

父』


父、の文字は何度も消された跡があった。


きっと書く資格の有無を疑っていたのかもしれない。


書いてくれたこと、嬉しかった。


最終的に、父と書いてくれて…


その後は、全く来なくなった。


養父母に気をつかったのか、忙しくなったのか。


正直、高校の入学も卒業の時も期待してたのに。


「法学やべーよ」


同室の一人が話かけてきた。


手紙をしまい、教科書の下に隠した。


「所詮、暗記だろ?やるしかないよ」

「お前、簡単に…。なぁ、将来の目標とか決めてるか?俺は、生活安全課が希望かな」


「うーん。高望みしたら、刑事課。キャリアじゃなきゃ、結構キツイらしいけど…扱いとか…」
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